FINE ROAD(84)日本ホーリネス教団 八王子キリスト教会

FINE ROAD(84)Hachioji Holiness Church
日本ホーリネス教団 八王子キリスト教会
竣工  2007年 10月  所在地 東京都八王子市散田
構造  鉄骨造2階建 延床面積  662.59㎡(188.3坪)
設計者 西村建築設計事務所 http://www.nishimura-architect.com/
施工者 谷津建設株式会社 http://www.yatsu.co.jp/

「200人会堂を」
八王子教会は、1966年開拓伝道開始、1969年米国での学びを終えた松木祐三牧師夫妻が派遣され、1973年会堂を建設、1992年には株分けの陣場高原キリスト教会を建設。信徒が増え手狭になった八王子教会のために近隣の広い土地を探し続けたが、2002年松木祐三牧師が召天。松木従子牧師を主任牧師とし、松木祐三牧師の熱い願いであった「200人会堂を」という新会堂建設へ向け、教会員がひとつの家族のように結束し、翌年には近くに希望の土地が与えられました。

2005年設計者選定協議により5社の中から選定され、2007年5月着工、10月完成、献堂式は松木祐三牧師召天6年記念となる2008年2月に行われました。

1941年、太平洋戦争勃発により、キリスト教諸派は日本基督教団として統合されました。1942年、その中のホーリネス系諸教会は解散させられ、伝道者たちは解職、あるいは投獄という難に遭い、中には殉教したものも出ました。戦後、1949年、日本基督教団を離脱、日本ホーリネス教団として組織し、現在に至っています。

 

一本の光の軸
交差点に立って敷地を見ると、一本の軸がまっすぐに引けます。この軸は変形五角形の敷地を対角線に結びます。敷地の奥隅から交差点までこの軸を中心線にして、教会堂のすべての機能を配置していきました。
この軸から、建物はノアの箱舟の型ができ、テーマである虹に向かって船出します。
「光あれ」といわれたように、教会の入り口は東に向いています。建物が南東方向を向くことにより朝の光が差し込み、教会学校、そして主日礼拝の明るい顔となります。

神の家族の礼拝堂
イエスが最後の晩餐の場所を指し示すのと同じように、二階に神の家族が集まり礼拝します。
軸の正面に講壇を設け、会衆席が扇状に囲みます。講壇には段差を設けずに会衆席と同じレベルにして共に交わる家族の輪となります。
八王子教会では礼拝での賛美がたいへん重要な要素を持っています。向かって左にコンサート用のグロトリアン・スタインベック、右に電子オルガンを配し、力強く美しい賛美があふれます。
前面左手に二十名ほどの聖歌隊の舞台を一段高く設け、洗礼槽を組み込みました。洗礼槽は浸礼式の洗礼を行うため、目で見えない霊的なものである福音を、目で見、手で触られる形をもって表し、伝えるものとして、ホーリネス教会は設けています。

礼拝堂正面

残響1.5秒の最適な空間
牧師の説教が聞き取りやすく、かつ賛美が豊かに響くよう、特に配慮しています。音響工学の専門家㈱エーアールhttp://www.aar.co.jp/jigyoshokai.html の福原氏の協力を得、残響時間1.5秒の最適な空間となりました。教会員の放送関係者の要望により、音響コントロールは別室とせずに、共に礼拝できるよう会堂内コーナーに設けました。
建築的には、天井面は吸音3:反射1、壁は床から2mまではタモ材、両サイド壁は天井まで三角スイ、三角柱を並べた白い反射壁で音を拡散し、四隅付近は音がこもるため吸音壁に、背面は一面に吸音壁とし、音響工学に基づく仕様・形状を効果的に配しました。音響調整用吸音材は、ペットボトルをリサイクルした新しい吸音材(エーアール・ファブソーバー)を用いています。これは発塵せず、肌に優しく、環境に配慮したものです。
難聴者対策として、床の一部に補聴用ループシステムが設置できるようにしてあります。補聴器を装用しておられる方々が、ループシステムエリア内に居ることにより、拡声器を用いて音声を明確に聞き取ることができます。

全員参加のステンドグラス
正面左右上部に「虹」をテーマとしたステンドグラスをはめ込みました。
友人の造形作家西村陽平氏によるデザインです
http://www.isogaya.co.jp/artist/nishimura-yohei/y-nishimurareki.htm
青いガラスは時間により刻々と変化し、その中に教会員全員で作った粘土の素焼きの十字架がいっぱい吊るされています。

 

1階

エレベーター近くのメイン階段

集会室A

集会室B

和室

厨房

 

八王子教会は、家族のような温かい教会です。初めて建築委員会の面接に伺ったとき、この人たちとなら良い教会ができる、とまだ設計が決まっていないのに確信しました。
毎週昼食を共にし交わりを大切にする教会、子供達がとびまわり、若い人の活気あふれる教会。打合せのたびに礼拝から出席し、一緒に食事をいただきました。
この教会に出会い、設計に携わることができたことを心より感謝しています。